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大阪高等裁判所 平成5年(行コ)9号 判決

大阪市生野区新今里五丁目一六番一四号

控訴人

池田拓治

大阪市生野区勝山北五丁目二二番一一号

被控訴人

生野税務署長 岡嶋貞夫

右指定代理人

山口芳子

西教弘

的場秀彦

久保日出夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人

1  原判決を取消す。

2  被控訴人が控訴人に対して、平成元年七月四日付でなした昭和六三年分以降の所得税の青色申告の承認の取消処分並びに昭和六三年分所得税の更正及び過少申告加算税の賦課決定を取り消す。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二事案の概要

本件事案の概要は、次のとおり付加、訂正するほかは、原判決の事実及び理由中の「第二事案の概要」欄記載(原判決一枚目裏八行目の冒頭から同一一枚目表三行目の終わりまで)のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一枚目裏八行目の次に行を改めて「本件は、控訴人が、被控訴人(生野税務署長)が控訴人に対して平成元年七月四日付でなした、昭和六三年分以降の所得税の青色申告の承認の取消処分並びに昭和六三年分所得税の更正及び過少申告加算税の賦課決定が後記の控訴人の主張のとおり違法であることを理由に、その各取り消しを求める事案である。」を付加する。

二  同三枚目裏六行目の「ものである」を「ものであり、また推計の必要性も、合理性もなくなされたものである」と改める。

三  同六行目の次に行を改めて「(四)控訴人の右各主張等をさらに詳述すると、別紙一の準備書面記載のとおりである。」を付加する。

四  同七枚目裏九行目の次に行を改めて「(三)前記1(四)の控訴人の主張に対する被控訴人の反論等は別紙二の準備書面記載のとおりである。」を付加する。

第三争点に対する判断

当裁判所の右判断は、次のとおり訂正、付加するほかは、原判決の事実及び理由中の「第三争点に対する判断」欄記載(原判決一一枚目表四行目の冒頭から同二三枚目裏一〇行目の終わりまで)のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一一枚目裏八行目の「乙」を「甲第一三号証、乙」と改める。

二  同一三枚目裏六行目の次に行を改めて「(ハ)なお、平成二年六月二一日、大阪国税不服審判所は、被控訴人の控訴人に対する昭和六〇年ないし同六二年分の所得税の各更正及び過少申告加算税の各賦課決定の一部を取り消す旨の裁決をなした。」を付加する。

三  同一四枚目裏三行目の「理由も」から同六行目の「ないから、」までを「理由は、担当職員がかって控訴人の税務調査を担当したことがあって、その調査の結果による被控訴人の控訴人に対する所得税の賦課処分等に違法な点があることによるものではあるが、納税義務者である国民には税務署の自己に対する担当職員の変更を求める権利を有しなく、担当職員のかつての調査にその裁量権を逸脱して濫用した事情があることを認めるに足る証拠もない(前記認定のとおり国税不服審判所において被控訴人の控訴人に対する更正処分等の一部の取消をなす旨の裁決がなされたことだけから直ちに右事情があると断定することは困難である。)から、正当な拒否理由があるものと認めることはできないので、」と改める。

四  同一五枚目表七行目の「認められる。」の次に「なお、控訴人は、担当職員の変更が認められておれば、帳簿書類を提示して調査に協力していたので、推計の必要性はなかった旨主張するが、前記説示のとおり控訴人の担当職員変更の要求は認められないものであるから、右主張は失当である。」を付加する。

五  同一一行目の「のであるが、」から同一二行目の「おくとしても、」までを「。しかし、法二三四条一項三号の調査(反面調査)は、原則として、納税者の調査協力が得られない場合や納税者本人の調査だけでは取引内容が明らかにできない場合に実施するものであるが、右調査の実施は、事前に、納税義務者本人の承諾や同人に対する通知及び調査理由の告知をなすことを要しなく、当該職員の合理的裁量に委ねられていると解するのが相当であるところ、」と改める。

六  同裏二行目の「ないため、」を「ず、控訴人には右協力を拒否できる正当な理由もないため、」と改める。

七  同一八枚目裏三行目の「る。」の次に「なお、控訴人は、本件係争年には不動産の新規投資をなしてその必要経費が増額しているので、この点につき昭和六一年分と類似性がない旨主張し、その証拠として甲第一一号証(控訴人作成の帳簿)を提出しているが、この記載内容が信用できないことは後記に説示のとおりであるから、控訴人の右主張は採用できない。」を付加する。

八  同一一行目の「が認められる。」から同一九枚目表二行目の「認める。」までを「(なお、株式会社井上については乙第八号証の取引金額欄記載の金額から「その外(相殺等)」欄記載の金額を控除した金額)が認められる。」と改める。

九  同二三枚目表九行目の「右書証」から同末行の「できない。」までを「その記載の要領等からして、右書証は控訴人が取引等の都度遂次裏付け資料に基づき記帳したものではなく、後日纏めて記帳したものであることが窺われ、その内訳明細が明らかでない分が多く、右記載内容を裏付ける的確な証拠(その元になった原始資料等)の提出もないから、右証拠の記載内容は信用できず、この記載のとおりの取引等の事実があったと認めるわけにはいかない。」と改める。

第四結び

よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮地英雄 裁判官 山崎末記 裁判官 富田守勝)

別紙一

平成五年(行コ)第九号

控訴人(原告)池田拓治

被控訴人(被告) 生野税務署長

原告第壱準備書面

平成五年六月壱日

控訴人(原告) 池田拓治

大阪高等裁判所 第四民事部御中

第一 平成三年(行ウ)第二二号所得税更正処分取消請求事件(以後第一審という)判決の事実及び理由第三の争点に対する判断に対する不服

一 青色申告承認取消処分についてに対して

1 文中「-------。したがって、当該職員から右帳簿書類の提示を求められたのに対し正当な理由なくこれを拒否した場合には-------というべきである。」の正当な理由に対して、第一審の準備書面の中で、多くを陳述して来た。

この事実に対して、世人の多くは正当な理由に値すると判断を下しているし控訴人も又、その様に理解しているが、第一審では、この点が認められていない。

この時点、平成元年四月頃は、被控訴人はまさか仲間の大阪国税不服審判所長の裁決(甲第拾参号証)が「原処分庁の主張は採用できない。」と出るとは思いもよらず。

「参田よくやったぞ、金参千弐百万円の手柄、ほめてとらすぞ、今一度頑張って手柄を見せてくれい。」と思い上っている最中だ、控訴人にとって、この裁決は当り前の事であり被控訴人や参田他多くの被控訴人の職員達に教示して来た通りである。

若し、この裁決が、この時点までに出ていたか被控訴人自らが、法と法の精神に基づいて判断がなされていたなら、いかに阿保な被控訴人と云えども、二度と同じ過ちを繰り返そうとはしないだろう。当然の事、本件の調査担当者を参田以外の者に担当させ、

「参田の様な過ちを繰り返さないで、正しく調査しなさい。」と送り出したに違いない。

控訴人も、一応調査官を信頼して、青色申告の為に作成してある甲第拾壱号証をその原始記録等と共に提示して調査に協力をしていた。

又、文中「単に担当職員がかつて原告の税務調査を担当したことがあり、その結果に原告が不満をもっているというだけのこと-------」と判断されているが、単にと云う、そんな簡単な事ではない。単に壱拾萬円や金弐拾萬円程の金円ではなく、金壱百萬円や金弐百萬円の金円でもない。多分参田が一生かかっても貯金できる金円でもない。現在では、たったの金参千弐百萬円と云われるかも知れないが、納税当時、私にとっては大金だった。店舗を担保に融資を求めたが、担保不足の金円だった。

その大金を、税法も満足に解釈出来ない。無知な税務職員参田が権力のみで課税した。

これが、単にと云う簡単な事か。

参田の無能ぶりは、前記裁決により明白であるが、平成二年(行ウ)第五九~第六一号、これが前記課税事件の一部の事件であるが、この中で控訴人の取引回数(課税要因)を数えるのに控訴人の主張六〇年四二回、六一年四三回、六二年三六回に対し、参田の主張六〇年八九回、六一年八四回、六二年四五回と数えている。甲第拾参号証に明白。

勿論、大阪法務局訟務部部付検事でも被控訴人の代理人として、六二年六一回、六一年五五回、六二年五九回を主張し、約三年経過の今日、六〇年五二回、六一年五二回、六二年五一回と主張している。

いずれも実に無知な事だ。

参田も含めて課税庁関係の職員がこれでまあ国民から税金が取れるものだとあきれる。

控訴人の昭和六〇年度の修正申告書も、本件の基となっている昭和六一年度の修正申告書も控訴人の留守中に参田が、控訴人の妻に署名押印をさせて、参田自らが提出したものだ。甲第拾参号証に明白な如く、これらの事実でも尚、単なる不満を持っているというだけのことと云えるか。

二 本件更正等について、に対して

1 手続上の争点について

(一) 推計の必要性について

前記一1の記載のとおりを、正当な理由と認め、担当調査官の変更が認められておれば控訴人に、調査拒否の理由もなく、控訴人は明らかに実額の計算が可能な帳簿書類を提示し調査に協力をしていた。従って本件には推計の必要性はなかったと云える。

(二) 調査手続の違法について

被控訴人と担当職員参田が控訴人に対する面接調査の為に初めて臨場したのは、平成元年五月一〇日であることは判決により明白である。

一方、甲第拾四号証で明白な様に参田は平成元年五月壱日訴外平岡証券松原支店に対し照会文書を送達して反面調査を行っており、面接調査の前に反面調査を行なうことは違法である。本件反面調査は、明らかに控訴人の調査への協力が得られないと認められる平成元年六月三〇日の翌日から、みだりに流れない様に留意して行なうべきである。昭和二五年四月三日付昭和二六年一〇月一六日付国税庁長官発国税局長宛通達。静岡地方裁判所昭和四七年二月九日付判決らを参考にして判断していただき度い。

又、昭和三六年七月一四日付国税庁長官通達にも

「調査にあったては、いたずらに調査の便宜のみにとらわれて、納税者の事務に必要以上の支障を与えることのないように配慮することとし、このに反面調査の実施に当たっては十分にその理解を得るよう努めること。」とあり留意され度し。

2 実体上の争点について

(一) 推計の合理性

(1) 本人比率による推計について

本人比率による推計方法は、原則として認められるものである。但し例外もある。

(2) 昭和六一年分の本人比率を用いている点について

本人比率を用いるにおいて、原判決指摘の通り昭和六二年分の事業所得の金額及び不動産所得の金額については争いがあり、昭和六一年分の事業所得の金額及び不動産所得の金額が、本件係争年分に最も近く、かつ控訴人にも異議のない金額であるから、昭和六一年分の本人比率を適用する事には合理性があるということができるが適用の後に、理由のある非合理性を本人より指摘あれば、これをも又採用しなければならない。(非類似性の指摘)

(3) 本件係争年分の業務と昭和六一年分の業務との類似性について

本件係争年分と昭和六一年分とにおいて、業種、業態、事業規模、事業場所等の変更は、係争年度に於いて、不動産の新規投資(甲第拾壱号証)を行った以外は殆どなかった。しかしながら新規投資には営業上の経費の増加が認められる。

係争年分の控訴人の経費もその通りであった。

ご指摘の通り事業所得に係る売上原価、不動産所得に係る収入金額は、両者の間に大きな変化はなくしても、両者の必要経費には大差が生じるのである。

したがって、控訴人の本件係争年分の業務と昭和六一年分の業務には事業所得による売上原価や不動産所得に係る収入金額に大差がなくとも、上表の通り、不動産所得に係る収入金額を得る為の必要経費には大差があり、両者の間に類似性が認められない。

(4) 基礎数値の正確性について

控訴人の昭和六一年分事業所得及び不動産所得の金額は、控訴人の仮決算により、同年分は所得の割に必要経費が少なく、課税される所得金額が多くなり、税金が多く生じるので、乙第五号証その他の事業欄、修正前の課税額欄記載金額九百壱拾萬四千壱百六拾七円也を債権放棄による貸倒金として計上し、任意に課税される所得金額及び課税を少なく修正したものであり、逆に、本件課税年度分は、貸倒金を計上しなくても、課税される所得金額も多大でなく、税額も多くない年度であり、したがって、昭和六一年分は本件係争年分の基礎数値とはならないので、同年分の本人比率を適用して推計したことには合理性がない。

(二) 事業所得について

(1) 売上原価の金額

判決により認められた金額 一九、四二八、九五四円

控訴人の主張する金額 一九、七〇八、八二五円

その差 二七四、八七一円

誤差が生じるが、争う程の差ではない。

(2) 事業専従者控除額

本件青色申告承認取消処分は不適法であるので、法五七条一項の適用を求める。

(三) 不動産所得について

(1) 不動産収入の金額

イ 判決の通り、所得税法三六条一項については控訴人も理解している。

ロ 控訴人の主張は、前記で述べた通り本件青色申告承認取消処分は不適法であるので、法六七条の二の適用を求める。

又、本件に於いては、担当職員の再三の説得以前の問題であり、別件の平成二年(行ウ)第五九~第六一号の関連したる誤課税事件と同様の事件を未然に防止する為にも、控訴人の立場より見れば、当然の事にも担当者は別人にすべきであった。

控訴人は、本件青色申告を正しく行なう為に、平成元年一月一七日に被控訴人に対して、甲第五号証を提出し、その御指導を求めた。

これに対する被控訴人の御指導は、乙第二号証甲第拾五号証に記載の「今、生野税務署は、貴殿と喧嘩中ですので、何んの質問にもお答えしませんし、何んのご指導も致しません。

申告書は好きな様に勝手に申告して下さい。

申告後に徹底的に調査をさせていただきます。」に終わった。

その後被控訴人は、本件の通り参田を担当職員とした。控訴人の最も危惧したことは、平成二年(行ウ)第五九~第六一号事件と同様の判断を持って適用すれば、甲第五号証に記載の株式売却利益金は、必ず課税となる事です。

参田は前記事件で、控訴人と控訴人の家族の全てを、所得税法第一二条の適用で合算と認定し、多額の課税をした。

当然として、甲第拾参号証に明らかな通り、控訴人の妻の分に対して「原処分庁の主張は採用できない。」と裁決されたが、この時点では被控訴人にも、参田にも解っていない。控訴人には解っているだけに大変だ。控訴人とすれば、又、つまらない立替納税をしなければならないし、又、提訴しなければならない。

担当職員を変更して欲しいとの要求は、控訴人にとって、当然の事であり、無駄を防ぐことで国家と納税者の利益ともなるのである。

幸いにも、参田は、平成二年行ウ第五九~六一号事件と同じ判断をしなかった。

幸いだが

不思議な事だ。

いずれかが

法による課税でないのだ。

同じことが、同じ職員によっても

課税とも非課税ともなる

実に不思議な事が生じた。

参田とは、実にこれぐらいの程度の低い職員だ。

参田だけではない。当時の被控訴人の職員達は被控訴人を含めて殆んどが、この程度だった。

税法を知らない職員達が天国で、知っている納税者は地獄だ。

平成五年六月八日、生野区民センターにおいて大阪府小売酒販売組合生野支部の定時総会が開催される。

来賓として生野区長を始め被控訴人とその職員、その他数名の出席を見る。

控訴人は甲第四号証に餞別金について明記したが、本席では、来賓の御礼として被控訴人である

生野税務署長に

ビール券五〇枚が

送られる。

国家の上級役人だけが腐敗しているのではない。

木端役人もこの様だ。これこそ悪の根元だ。この根性が、上級役人の大型増収賄に成育するのだ。この事が、被控訴人の署に於いても、法によらず法を食物として課税し、礼金等で私腹を太らせているゆえんだ。

だから、参田も、税法を勉強せづ、恣意的な見解で判断し、課税を促がしていても職員が勤まるのだ。

いやむしろ、勤勉に励むより、要領を心得た職員程成功するものだ。

若し、参田以外の出来れば、新任の職員に変更がなされていたら、受忍義務のある控訴人は当然の事、日夜記帳に励んだ青色申告承認の義務ある帳簿書類とその原始資料を全て提出して義務を果していた。

したがって、担当職員の変更を求めた控訴人には、前記の通りの理由があり、理由なしと認定し、本件青色申告承認取消処分は不当であり不当であるならば、当然の事として、法六七条の二の取扱の適用を受ける余地がある。

ハ よって、「収入すべき」の適用より「収入した」適用が妥当である。

ニ 以上の見解に従って判断すると、不動産所得の収入した金額は、

判決により認められた金額 二一、二六一、〇〇〇円ではなく、

控訴人の主張する金額 一八、六一九、〇〇〇円

(甲第壱拾号証及び控訴人第六準備書面の通り)

であり、その差 二、六四二、〇〇〇円

は、久下貞子 一、五〇一、五〇〇円

木又豊市 五四〇、〇〇〇円

その他等の未収入金である。

したがって、課税処分取消訴訟の審理においては、単なる推定による課税処分の総額主義に囚れる事なく、青色申告の毎日記帳による正鵠を得た資料による正しい実額課税によるべきである。

(2) 借入金利子の金額

判決により認められた金額 五、一二六、五〇一円ではなく

控訴人の主張する金額 六、〇三〇、二五六円

であり、その差 九〇三、七五五円

は、(株)住友銀行今里支店分である。

(四) 控訴人は、本件係争年分の所得の証拠として、甲第拾、拾壱号証を提出した。右書証は控訴人の収支状況をずっと後でまとめて記帳したものではなく、日毎の原始資料より纒めた内訳明細(出入金伝票前)により、甲第拾号証は五日毎、甲第拾壱号証に拾日毎に記帳整理したものである。

控訴人は元々、原始資料や内訳明細と共に、右書証を提出しようと思っていたが、控訴人の第六準備書面一、謝罪に明示したことがあり、福富昌昭裁判長裁判官からも、最後になってドカッと多くの書証を出されては困るという様な事を云われ、窘なめられたので、最小限度で充分判断出来る程度で提出した。

又、一方何百枚と云う原始資料、何百枚と云う内訳明細、何本かのレヂペーパー等を複写して提出する事が、本件係争に必要かどうか、控訴人は迷った。特にレヂペーパーの複製などはどの様に作成すべきかを迷った。

結局、甲第拾、拾壱号証はその纏だし、控訴人の各準備書面もそれを補なっているのだし、まづは充分だとも思い、尚、不明なら求釈明もされる事だと思った。

(五) 結論前

本件係争は、控訴人が一審で累々主張をして来た通り、又、甲第二号証いきさつ報告書に記載の通り昭和六三年二月二日から始まったと思うのが妥当である。

今一度、振り返って次に託す。

一.控訴人の職員岸本は、控訴人の昭和五拾九年から昭和六拾弐年に亘る所得税の課税に対して甲第二号証「過去三年に亘る調査と六二年度分確定申告、税額決定のいきさつ報告書の通り課税を促したが、この昭和六拾弐年度分の所得税の確定申告の税額決定は日本国憲法第八拾四条(租税法律主義)及び国税通則法並びに所得税法を無視した弾圧的な課税決定行為である。

二.被控訴人の署長藤井藤富は、控訴人の、岸本がしたる前記行為に対する再調査の依頼に対して、前記「いきさつ報告書」に記載の通り正鵠をえない理由で断った。

尚、藤井は、国税通則法及び所得税法を無視した前記岸本の税額決定を安易に追認をした。これは憲法第八拾四条に違反する。

三.岸本は、控訴人の昭和六拾弐年度分の所得税の確定申告の税額決定に際して、前記「いきさつ報告書」に記載の通りの「申送書」を書き示して、約定して於きながら、後に「書いていない。」と偽ったり、又、別の申送書を作成したり、対比する個所、即ち、前記「いきさつ報告書」の中の申送書に記載したる「-------、過年度分については省略した。」を「-------、過年度分については、調査中であり保留にした。」と書き換えたりした事は、許されるべき行為ではない。

四.藤井は、控訴人の昭和六拾参年参月壱拾壱日付の更正の請求に対して、同年四月壱拾四日付で一切の調査もせづに、昭和六拾弐年分所得税の更正の請求に対してその更正をすべき理由がない旨の通知処分をし、その通知処分に対し何んの理由附記もなされなかった。

五.被控訴人の職員稲岡丈介は控訴人の同年四月壱拾五日付の異議申立に対して、争点が明らかであるのに、その争点以外の広範囲な調査を行った事は、異議申立人(控訴人)の権利利益を離脱し、控訴人及び家族に違法な圧力をかけた。

尚、稲岡は、所得税調査上の必要として、前記争点以外の伝票や帳簿を持ち帰えり違法調査を行った。争点は株式売却益即ち雑所得であります。

六.稲岡、藤井等は控訴人の前記異議申立に対して、その真実となる事実関係の調和、その争点となる個所の調査等に殆んど質疑をせず、殆んど争点以外の個所のみの調査に終り控訴人に課税要因の説明も無いまま単に追認と云う形ちで、昭和六拾参年七月七日付で異議申立を棄却した。

異議決定書謄本には違法調査の痕跡や所得税法の誤認の跡を歴然と残し、争点となる雑所得に対しては、控訴人にとって判断しがたい抽象的過ぎる表現をしている。

七.本件の参田は、岸本が前記「いきさつ報告書」に記載の「申送書」にも係わらず控訴人の昭和六〇、六拾壱、六拾弐年度分の所得調査と称され、「申送書」の内容を無視して、調査された。

調査の中で、正しい税法を誤って控訴人に圧しつけ、無理にも修正申告を提出する様に偽りの課税要因を捏造された。

控訴人が一部分の修正を認めると、参田は修正申告書を自ら作成し、昭和五九年八月六日午後壱時に生野税務署内に於いて訴外オオベ殿他数名の署員と面接の結果、昭和六拾壱年拾弐月拾八日付更正通知書に於いて訴外水野良博署長が是認された、控訴人の訴外次女の専従者給与(専従者としての届済)を理由なく否認された。

控訴人は、参田が誤認をしたこの部分を訂正して修正申告の提出する積りであったが、この理由をしらない訴外控訴人の妻に控訴人の留守中に控訴人宅に訪づれ、署名捺印を求めて持ち帰り、受付印を押して控を留守宅に届けた。

同修正申告書は控訴人の提出の意思もなく、本人以外の者に署名捺印を求める行為は違法行為である。

又、参田は課税要因でない要因を捏造したり、正しい申告であるのに誤ってか、知りつつか、税法を曲げて、最後の最後まで控訴人に残りの部分の修正申告を促した。

八.被控訴人の署長上田雄彦は控訴人が異議申立人としてその口頭意見陳述に補佐帯同の許可申請を平成元年弐月六日付でしたが、同月八日に不許可処分にした。

不許可の理由付記がなされていないので、控訴人が電話で問合わせると、被控訴人の職員本田義孝、岩崎弘人らは、「大阪国税局管内に於ける補佐人の見解は、異議申立人が身体障害者等であり、その介護を必要と見られるときにのみに認めており、貴殿の様に健康な人には認めていない。」との回答でした。

国税通則法第八拾四条の規定は、異議申立人の権利利益を考慮して、その意見を口頭で主張する機械を与えるべくを目的として立法された法規定で、異議申立人が補佐人を必要として異議審理庁になされた許可申請には、例えば、壱人の異議申立人が拾数人もの補佐人を帯同するなどの不自然な場合、又は、補佐人が異議申立人の意志に反した発言をするなど真実の発見を阻害すると認められる場合には許可しないという趣旨に出るもので、本法には特定の規定はなされていないが、本多、岩崎の見解とは異なる。

又、岩崎は、

「補佐人は前の理由で認められないが、代理人なら申請されれば認める。」と云われたが、補佐人と代理人とは全く異なる。

前記のように誤った理由、見解で補佐人帯同申請を不許可処分にする事は、異議申立人の権利利益を考慮せず、憲法第拾壱条、第拾参条、第拾四条、第拾九条及び国税通則法第八拾四条第一項の規定に反する。

よって、上田の処分行為は違法である。

九.本多、岩崎は控訴人の前記口頭意見陳述平成元年弐月壱拾四日に於いて、意見陳述中に職権でもって控訴人の異議申立人としての意見陳述の機会を剥奪した。

異議申立人に意見陳述の機械を与えずに異議決定をしたときは、その異議決定は違法な処分となる。

拾.上田は、前記九に記載の通り、控訴人の異議申立人としての口頭意見陳述の機会を剥奪したまま、平成元年参月弐拾日付で異議決定がなされた。

この行為は職権による明白な違法行為である。

拾一.被控訴人の控訴人対する一連の違法行為と不当な圧力による課税行為は、控訴人の真実を見づに、課税要因を捏造した行為である。

これらの行為の原点は、控訴人が常に原処分庁である生野税務署に対して、署や職員の網紀粛正を求めて来た反動でしかないと思われる。

例へば、署の式典等に於ける酒類の寄附強要

宴席にて二次会の強要やお土産の強要

職員移動に於ける金員の受領

土地侵奪の黙認

中でも、職員の移動に於ける金員の受領には目に余る事がある。個人で届ける納税者の殆んどは、職員の在任中に何んらかの有利性を受けた者であるか、あるいはいつの日にか有利性の計らいを受けようとする者であり、控訴人の属する組合に於いては、生野税務署との年中行事の如くに、職員の所属と役職によりその金額が定められている。

公務員がその服務規定を忘れて、地方行政に於いて平気で金員の受領を行っている行為が、いづれ国家の行政につながり訴外金丸氏の様な問題の原点である。

訴外近年に於いて金員を受領したと思われる者は当時の

藤井藤富(尼崎署長) 浅野義雄(局・訟務官)

谷口好克(奈良統括) 奥水昭男(東大阪・統官)

佐川英雄(東・統官) 池野茂生(局・統括主査)

村上好和(局・相談官) 小坂博二(草津・統官)

勢川保夫(東・統官) 宝官一麿(局・調審課長)

稲葉隆康(東淀・副署長) 岡崎肇(西宮・所特調)

山口厲(泉佐野・特調) 高月一雄(東住吉・統官)

田川光雄(八尾・統官) 田中泰平(東大阪・特調)

南和夫(東住吉・総務課長) 笹谷昇(宇治・特調)

嶋田賢造(西成・統官) 伊丹聖(西淀川・署長)

西力(奈良・特調) 大西武(八尾・特調)

鵜飼洋伍(局・特調総括主査) 松田富治(大淀・特調)

佐々木哲久(局・訟務官) 桑村睦男(泉佐野・署長)

高谷宗一(局・訟務官) 茨木博史(境・統官)

辻貞夫(局・国税庁大阪派遣監督官) 徳原敏安(和歌山・統官)

梅崎茂(局・相談官) 上田裕之(豊能・特調)

池田忠義(局・特整主査) 大崎直之(八尾・副署長)

古川雅彦(局・相談官) 除く退職者であり、この事に対して、国税庁大阪派遣監督官の訴外某殿も、「理由のない金員は動かない筈。」と云っておられます。

控訴人は今後も生野税務署の税務行政に特に気配りをして行く積もりです。

控訴人は府下の税務行政の中で、生野税務署が特に腐敗している様に思って居ります。

(六) 結論

本件更正等の実体上の争点については以上のとおり判断されるところ、控訴人の主張には、相当と認められるから、本件更正等は実体上も不適法というべきである。

証拠の申出

甲第拾参号証 裁決書謄本写 一綴

甲第拾四号証 照会文書写の写 一枚

甲第拾五号証 異議申立書写 一綴

別紙二

平成五年(行コ)第九号

控訴人 池田拓治

被控訴人 生野税務署長

被控訴人第一準備書面

平成五年七月一三日

被控訴人指定代理人

山口芳子

青山龍二

西教弘

久保日出夫

大阪高等裁判所第四民事部御中

被控訴人は、控訴人の平成五年六月一日付け準備書面に対しては、原審において被控訴人が主張しているところで足りると思料するが、更に補足して以下のとおり反論する。

第一 証左手続きの適法性について

控訴人は、右準備書面第一の二1(二)において、控訴人に対する面接調査の前に調査担当者がなした反面調査は違法である旨主張する。

しかしながら、納税者の取引先や取引銀行に対する調査等のいわゆる反面調査は、原則として、納税者の調査協力が得られない場合や納税者本人の調査だけでは取引内容が明らかにできない場合に実施しているのが、反面調査に当たって納税義務者本人の事前の承諾を要するものではなく、また、同人に対する事前の通知及び調査理由の告知は反面調査を行う上の法律上の要件とされているものではなく、当該職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべきである(東京地裁昭和五二年九月二九日判決・税資九五号六三七ページ、東京高裁昭和五五年六月九日判決・税資一一三号五六ページ参照)。

これを本件についてみると、調査担当者は控訴人に対し、平成元年四月二〇日及び同月二四日に、あらかじめ調査に赴く旨の連絡をしたが、控訴人が正当な理由もなく調査に応じないため、控訴人本人に対する調査では目的を達し得ないと判断して、調査への協力が得られなければ反面調査を進める旨伝えた上で、反面調査を行っているものである(乙第四号証『陳述書』)から、右反面調査に関する調査担当者の判断は合理的であって、なんら違法なものではない。

なお、控訴人が指摘している静岡地裁昭和四七年二月七日判決の事件に対する控訴審は、「質問検査を必要とする客観的理由が肯定される限り、その順序、方法等をどのようにするか等は右判例における実定法上特段の定めのない実施の細目的事項にほかならず、当該調査の必要性と相手方の私的利益とを比較衡量し社会通念上相当な限度内である限り、権限ある税務職員の合理的裁量に委ねられているものと解されるところ、反面調査(所得税法《以下「法」という。》二三四条一項三号)が臨宅調査等の補充的規定であって、当該納税者の調査が不可能である場合に限り許されるものと解すべきではない」として、原判決と異なる判示をしている(東京高裁昭和五〇年三月二五日判決・判例時報七八〇号三〇ページ)。

第二 本件青色申告の承認取消処分の適法性について

控訴人は、平成五年六月一日付け準備書面第一の一において、調査担当者に対する不満を種々挙げ、調査担当者の変更要求は、控訴人にとって当然のことであり、青色申告に係る帳簿提示拒否の正当な理由に当たる旨主張する。

しかしながら、前記第一で述べたとおり、本件調査手続には何ら違法な点はなく、また、控訴人が種々不満をいうところの別件(大阪地裁平成二年(行ウ)第五九、六〇、六一号事件)の調査手続についても、調査担当者がその裁量権を逸脱、濫用したとの事情は認められておらず、調査担当者を変更すべき特段の事情は存しないのであって、控訴人の右主張は、正当な拒否理由といえるものではない。

また、被控訴人が原審における平成四年一一月二四日付け準備書面(以下「最終準備書面」という。)第一の一で主張しているとおり、青色申告者は、帳簿書類の備付け等の義務を課せられているところ、当該職員から法二三四条の規定に基づき帳簿書類の調査を求められた場合には、これに応ずべき義務があると解される。そして、本件において、調査担当者は誠意を尽くし、再三にわたり控訴人を説得し、帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず、控訴人は調査担当者の交替に固執して、調査担当者の帳簿書類の提示要求に一切応じなかったのであるから、このような控訴人の帳簿書類の提示拒否が、所得税法一五〇条一項一号に該当することは明らかであり、本件青色申告の承認取消処分は適法である。

第三 本件推計課税の必要性について

控訴人は、平成五年六月一日付け準備書面第一の二1(一)において、調査担当者の変更要求が認められておれば、実額の計算が可能な帳簿書類を提示し調査に協力をしていたのであるから、本件においては推計の必要性はなかった旨主張する。

しかしながら、控訴人の右要求は前記第二に主張しているとおり、合理的な理由はなく、むしろ、当該職員が控訴人の本件係争年分の所得税調査のため、平成元年四月二〇以降三回にわたり控訴人の居宅兼事業所に赴き、控訴人に対し、帳簿書類の提示等調査への協力を求めたにもかかわらず、控訴人の所得金額を実額により把握し得る資料を一切提示しなかったのであるから、これを推計により算定する必要性があったことは明らかである。

第四 推計課税の合理性について

控訴人は、平成五年六月一日付け準備書面第一の二2において本件係争年分には新規投資により経費が増加したものであるから、事業所得による売上原価や不動産所得に係る収入金額に大差がなくとも、不動産所得に係る必要経費には大差があるから批准年(昭和六一年分)と類似性がない旨主張する。

しかしながら、被控訴人の原審における最終準備書面第三において主張しているとおり、控訴人の業種、業態、事業所に変更はなく、事業内容等に特段の変更は認められるものではないから、類似性があり、被控訴人主張の推計方法は合理的であることは明らかである。

第五 控訴人の実額反証について

一 控訴人は、平成五年六月一日付け準備書面第一の二2(三)(1)において主張している不動産に関する主張に対しては、被控訴人がこれまで原審における平成三年一〇月一六日付け被告第一準備書面の一、2、(一)、同四年四月一四日付け被告第二準備書面、同年六月三日付け被告第三準備書面及び最終準備書面第四において主張しているところで十分であると思料する。

二 控訴人の前記準備書面第一の二2(三)(2)において借入金について主張し、その立証方法として項第一〇号証を提出しているが、右証書に記載されている取引年月日、取引金額等が真実であるか否かを確認できる原始資料の提出が一切なされていないのであるから、右記載内容をそのまま承認することはできない。

また、控訴人は、本件係争年分の所得の証拠として、甲第一〇、一一号証を提出しているが、右各証拠に記載されている取引年月日、取引金額等が真実であるか否かを確認できる原始資料の提出が一切なされていないので、記載内容を信用することはできないのであるから、控訴人の実額に関する主張及び立証は失当である。

第六 結論

以上のとおり、原判決は、調査手続の適法性、推計課税の必要性及び合理性、控訴人の実額反証のいずれについても、その判断は正当であるから、本件控訴は速やかに棄却されるべきである。

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